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MPHの費用は回収可能かという話

JHSPH留学日記
 
「MPHを取るのはお金の無駄」
「MPHなんてとっても役に立たない」
「仕事につながらない」
 
という指摘を留学前からしばしば受けることがありました。
 
実際に経済的にどのくらいの負担になったのかを考えてみたいと思います。
(出費)
授業料 770万円
生活費 240万円
計 1010万円
(収入)
奨学金 640万円
(日本の奨学金財団+大学院から)
 
 
最終的に合計で約370万円の自己負担となりました。
 
 
奨学金を2ヶ所から頂けたの事は大きいですが、生活費を入れてこのくらいの出費であれば許容可能な方も多いでのはないかと思います。
実際に私の場合だと、留学に掛かった費用については、渡米直前のフリーランス期間や、その前の病院での給与からの貯金で十分まかなえています。
(特にフリーランス期の収入には感謝です。税金・保険料が高すぎて涙目でしたが、確定申告でまとまった還付金が受け取れそうで安心しました。)
卒業後には、元々働いていた病院の同年次の標準的なモデル年収よりも増えました。
さらに勤務時間は年間で600時間ほど減り、日当直は年間60日から0日になります。
(もしかしたらお盆・年末年始の当直バイトは入るかもしれませんが)
 
 
これらの事を考えると”少なくとも自分の場合”は
  • 給料アップにより1年以内に留学経費は回収可能。
  • 留学中に得られたはずの給与(機会損失)も数年以内に回収可能。
  • さらに勉強、研究や趣味のための時間が取れ、当直のない職場に移れた(労働時間の減少)。
という意味で経済的な観点からも悪くない結果だったと思います。
 
 
もちろんそれ以外にも
  • 世界中の公衆衛生実務家とのネットワークが出来た。
  • 行動科学や疫学・生物統計学・臨床研究についての知識が身についた。
 
 
といった長期的に役立つ可能性のあるメリットが多くありました。
何より臨床現場で「一生やりたいと思える仕事じゃないな」とモヤモヤしながら仕事を続けるのはかなりのストレスだったので、その点でも自分が「面白い!」と思える仕事が出来ることは非常にラッキーでした。
卒業後は複数の職場にお世話になっており、仕事の内容もそれぞれ違いながらも、公衆衛生大学院で学んだ知見を活かしながら仕事が出来ているので本当にありがたく思っています。
もちろん自分は若手のため、比較的給料に伸びしろがあったことも要因の1つです。さらには、MPH留学をしたからより条件の良い環境に移れたのかというと、その蓋然性は決して高くないと思います。
つまり留学あるいは公衆衛生大学院に行かずに、そういった職に就くことも不可能ではなかったかもしれません。
 
一般論ですが、公衆衛生業界の平均的な給料水準は決して高くないという印象を持っています。
最近だと米国の某自治体の公衆衛生専門職の求人を見かけましたが、おおよそ年間700-800万円程度でした。その他の産業保健コンサルティングの仕事などもチラチラと見てみましたが大体同じくらいの給与レンジに収まるようです。
もちろん特殊スキルがあったり、元々公衆衛生業界でのキャリアがあり、なおかつ自分の関心にマッチするポジションが見つけられる方たちは国際機関や製薬会社などの比較的待遇が恵まれた仕事を手に入れるというパターンもあります。
 
最終的に費用が回収可能かどうかは各々の状況に応じて変わるとは思いますが、少なくとも私は給料アップ+労働時間の短縮により費用を回収出来そうです。
さらに自分にとってやりがいのある仕事に就くことが出来たことは大きな収穫だったと思います。
経済的な軸だけがMPH留学をする理由ではありませんが、留学前の自分は、多くのネガティブな意見を聞かされて(大半はそもそもMPHホルダーではない人からですが)悩んでいたので、似た境遇の人への参考材料として今回の記事を書いてみました。
少しでも多くの方の参考になれば嬉しいです。

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