皆さんはソムタムをご存知だろうか。
タイ料理で僕が2番目に好きな一品だ。
(ちなみに1位はゲーン・ハンレー)
細切りのパパイヤに唐辛子、ライム、砂糖、ナンプラー、トマト、干しエビやピーナッツ等を加えて石臼で混ぜあわせたタイの激辛料理である。
一人前ずつ、お店のおばちゃんが客のリクエストを聞きながら作ってくれる、セミオーダーメイドの料理なのだ。
そんなソムタムが無性に食べたくなった僕は気温34℃とタイにしては涼しい構内を歩いて食堂へと向かった。
「๑ ส้มตำ(ソムタム、1つ)」
と僕が言うと、食堂のおばちゃんは少し驚きながら心配そうな目で僕を見つめてくる。
「この日本人にソムタムは食えるのか?」とでもいうかのように。
そして、唐辛子を何本か見せながら、「どのくらい入れる?」と聞いてくるのだ。
タイに来て一発目のソムタムが辛すぎて食べられないなんて、あまりにも惨めで悲しい気がする。さっきまで「辛いもの上等!」と思っていたのに、突然弱気になった僕は「ไม่เผ็ดหน่อยครับ(あんまり辛くしないでね。)」とつたないタイ語でおばちゃんにお願いした。
するとさっきまで不安そうな顔をしていたおばちゃんも、突然母のような優しい顔になった。
「やっぱりそうだよね。外国人に辛いのは無理だよ。私にまかせときな!」
というような得意げな表情で、調味料を次々と石臼の中へと放り込んでいく。これが長年の勘というやつなのか、鮮やかな手付きでパパイヤと調味料を混ぜあわせる。きっとおばちゃんの中ではすでに「気弱そうな日本人」向けのソムタムの味が完璧にイメージされているのだろう。
仕上げに干しエビやビーナッツを加えると、完成だ。
25バーツを払い、戦利品ソムタムを受け取って席に着いた。
恐る恐る、青々としたパパイヤを口に運ぶと、酸味・甘味・辛味・塩味が次々と舌の上で花開く。これこそタイ料理の基本となる「4つの味の調和」である。タイ名物あまーーーいコーヒーがなくても食べられる味だ。
しかし、何か物足りない。
美味しいのには違いないのだか、やっぱりどこか「気弱そうな日本人」向けの味なのだ。
タイというこの国にまだ飛び込みきれていないような、まだ壁の外へと突き抜けてない「気弱なソムタム」の味がした。
まだ、タイに来てあまり時間は経っていないから仕方ないのかもしれない。けれど、この場所を離れるときには「เผ็ดครับ!!(辛いよ!)」と汗を書きながら「突き抜けた味」のソムタムを笑顔で食べていたい。もちろん激甘のコーヒーで流し込みながら。
最後にこの大学でソムタムを注文する時には、あのおばちゃんにも心配そうな顔でみられないことを願う。そして、手加減しない量の唐辛子を笑顔で石臼へといれてくれることだろう。
またタイでの目標が1つ増えた。
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