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このブログについて

<このブログが目指すもの>

2002年にダニエル・カーネマンが、2017年にリチャード・セイラーがノーベル経済学賞を受賞したことで、行動経済学が日本でも注目を浴びています。最近ではビジネス誌でも行動経済学がもてはやされています。しかし、実際に「行動経済学」をコンセプトに打ち上げられた様々な健康介入には稚拙なものが少なくありません。世界で行われている行動経済学に基づく健康介入や身近なナッジを紹介し、少しでもよりよい社会が実現することを願っています。
私自身も勉強しながら、皆さんと一緒に学んでいきたいと考えています。
また、あくまでも実務家にむけて紹介記事がメインですので、研究デザインや統計解析などの解説は端折る場合があります。原著論文をできる限り示しますので、興味のある方はそちらをご参照ください。

 

<プロフィール>

K。医師。日本医師会認定産業医。
Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health在学中。
行動科学(Behavioral Insights)に基づく健康介入の社会実装をめざしている。

 

<ブログコンテンツ>

  • Nudge事例の紹介
  • 行動経済学及び行動科学の理論紹介
  • 医師としての働き方について

 

<行動経済学とは>

従来の経済学の世界では、経済主体は市場のあらゆる情報に精通しており、自己利益を最大化するように合理的な選択をすると仮定されています。このような仮定の合理的経済人をHomo Sapiens をもじってHomo Economicusと呼んだりします。
でも常に合理的な人間なんて存在するんでしょうか?
  • 自分にメリットがない飲み会でも、断りきれずに会費を払って参加してしまったことはありませんか?
  • 震災や自然災害の時に寄付をしたことはありませんか?
  • 二日酔いになるとわかっていて飲みすぎることはありませんか?
そうです。人間の行動というのは社会的な要因や偏った情報認知、感情に左右されてしまい常に経済的合理性に基づいた判断をできるとは限らないんです。
このようにHomo Economicusではなくまさに人間(Homo sapiens)の現実的で不確実な行動を理解する学問が行動経済学です。
行動経済学は心理学、神経科学、経営学等の様々な隣接分野の知見を取り入れて発展してきました。最近では複合分野として認知されており、行動「経済学」(Behavioral Economics)という名前ではなく行動科学(Behavioral Insights)という単語が使われることが増えていると私は理解しています。

 

<ナッジとは>

A nudge, as we will use the term, is any aspect of the choice architecture that alters people’s behavior in a predictable way without forbidding any options or significantly changing their economic incentives.1)
「ナッジとは人々の行動を、いかなる選択肢を禁じることも経済的なインセンティブを大きく変えることなく、予測可能な方法で変える選択設計である。」
ナッジとは「肘などで人々をそっと小突く」というのが本来の意味です。この言葉の通り、大きなインセンティブ構造を変えることなく、そっと人々を導くための仕掛けがナッジなのです。
禁止や命令といった厳しい規制とは対局をなすため、提示された選択肢から離脱することが容易でなければいけません。
このような特徴から、父権的自由主義(Liberitarian Paternalism)とも言われ、これまでの保守ともリベラルとも一線を画する立場であるとされています。
このようなナッジは社会のあらゆる問題を解決するのに役立つのではないかと期待されています。
身近なナッジの例についてはこれからのブログ記事で紹介していきますので、お楽しみに!

<まとめ>

・行動経済学は人の非合理的な行動に焦点を当てている。
・ナッジは人の行動を「そっと」後押しするための仕掛け。
・医療をはじめ社会の問題解決に役立つと期待されている。

 

<参考文献>

  1. Richard H. Thaler and Cass R. Sunstein, Nudge: Improving Decisions about Health, Wealth, and Happiness, Revised and Expanded Edition (New York: Penguin Books, 2009).

 

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