ホプキンスのMPHは8週間を1タームとしたターム制をとっており、7月1日からsummer termが始まりました。
summer termはMPHの必修科目を履修するスタイルなので、授業登録も自動で行われ、毎日大講堂で全員一緒に授業を受けます。
現時点では疫学、環境衛生学、公衆衛生倫理学、医療政策学の4つの授業を受けました。
それぞれの授業で教科書1章分+論文を事前課題として提示され、授業スライドも事前配布されるので、それらを予習していく必要があるのですが、分量がそれなりに多いので予習が今のところ一番大変です。
まだまだ入門レベルの授業が多いのですが、予習さえしていれば授業についていけないということはありません。
受けた授業の感想を少しずつ書いていきたいと思います。
疫学
そもそも疫学とはなにか。という話から未知の病気が発生した際にどのように調査を行うか、病気はどのように伝播していくのかというような概念的な部分を学びます。
今週は感染症伝播のモデルや、集団免疫などのコンセプトを学びました。
数学的要素は算数レベルしか出てきません。
MPHは実務家養成コースのため、視点が実践を前提にしておりとても興味深いです。
環境衛生学
系統的な知識というよりは何となく環境衛生学のトピックを雑多に話しているだけな気がするのが現時点での印象。
水俣病や福島原発事故などがフィーチャーされることもあり、日本人としては身が引き締まる思いです。
もし自分が産業医をしている会社であのような事故が起きたらどうするか、という視点でもあれこれ考えさせられる部分があります。
授業後に30分間教授と自由に討論を行う時間があり、今日は
「福島原発事故の原因は想像力の欠如で過去のデータしか見ていなかったことが不十分な対策案しか持たないことにつながり、このような悲惨な自体を招いた。」
という授業での発言に対して
「想像力の欠如と言うが、何も起きていない段階でステークホルダーを動かすにはエビデンスが必要だ。しかしエビデンスは過去のデータに基づいたものであり、経験したことのない予測外のことにはしばしば無力だ。そんな中でステークホルダーを動かすにはどのようなコミュニケーションをとればいいのか。」
と質問してみました。
「それは非常に難しい問題だ。」と言いながら
あれこれ脇道にそれながら色々な返答をもらいましたが、その中で個人的に一番心に刺さったのが、
「私達にはエビデンスがないかもしれないけれど、地質学者、気象学者や建築学者などの異分野の人を巻き込みながら話合うことでリスクを予測し、対策を事前に練れた可能性はある。想像力を働かせて、関連する分野の人々を広く巻き込むことが大事なのではないか。」
という言葉でした。
モヤモヤが残るアイディアですが、独善的になるよりかは100倍マシだなと感じました。
公衆衛生倫理学
健康介入には倫理的問題が常につきものです。
特に政策による制限や課税などは個人の自由を侵害したり、いとも簡単に社会格差を引き起こしてしまう可能性があるからです。
事前課題では政策立案を行う上で考慮すべき事項をステップごとに提示され、それらのフレームワークを実際の政策に当てはめて議論するような講義でした。
初回では砂糖入り清涼飲料水(Sugar-Sweetened Beverage:SSB)の規制を題材に議論が行われ、Nudgeを応用したNYのSSB販売サイズ制限政策が取り上げられました。
NYC在住歴のあるクラスメートの話を聞くと共和党勢力+関連ロビイストの反対がものすごかったようです。
今の所一番好きな授業なので、Capstone(ミニ修論)は「Nudge応用における実務家のための倫理的フレームワークの検討」とかにするのも良いかなとぼんやり考えています。
医療政策学
教授がとにかくフレンドリーで授業開始前から前列にすわっている学生一人ひとりに話しかけて周るほど!
しかもオバマ政権で連邦政府の中枢にいたという凄まじい経歴の持ち主。
選挙戦での舌戦の話なども交えての講義でとにかく面白い。
医療政策と公衆衛生倫理学は内容としては重なる部分も多いのですが、
研究者と政策立案者との連携、実現可能性を追求するための折衝の重要性が強調されていました。
ガチな医療政策実務者の話していると、なんだか自分も政策立案・ロビイスト活動出来そうな気分になってくるから不思議ですよね!(単なる身の程しらずw)
最終試験がまさかのロビイストとして教授が扮する上院議員に模擬エレベーターピッチをするという内容。
英語的な意味でカナリ不安で今からビビっていますが、ロビイストとして実践的すぎる試験内容に度肝を抜かれました笑
まだまだ始まったばかりなのでこれからの授業が楽しみです!
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