公式のOnlineだけで完結出来るプログラムが発足
2020年度からジョンズ・ホプキンスはオンラインで完結できるMPHプログラムを発足させるようです。
これまでもOnline/Part-timeのMPHプログラムはありましたが、国内外のキャンパスでのスクーリングが義務付けられていました。
しかし次年度のプログラムからは一切の通学が必要なく、世界中どこに住んでいてもジョンズ・ホプキンスのMPHが取得できるようになるとのことです。
具体的には1ターム(2ヶ月間)に1-3コースを受講し、2-3年かけて卒業するという学習プランが想定されています。合計80単位の取得、修士論文の作成、100時間以上の公衆衛生実務経験等の卒業要件を満たすことでMPHが授与されます。
これまでもあった日本プログラム
これまで日本人で現地への通学が難しい人は日本プログラムを利用することでジョンズ・ホプキンスのプログラムを受講することが出来ました。
単位の大部分をオンラインで履修し年1回京都で開かれるスクーリングに4回参加することで卒業できるというプログラムです。
こちらでは日本語でのサポートを提供していたり、入学要件である英語が一部緩和されたりというメリットがある一方で、スクーリング費用や日本事務局への手数料などがかかるというデメリットがありました。ししかし、そもそも日本語でのサポートがないと授業についていけないのであれば、日本のMPHに進学した方が学習効率的な意味でも良いと個人的には思っています。
今回のOnline/Part-timeの開講によりそもそもスクーリング自体が不要になるので、英語には問題ないけれど、現地に留学するのは難しいという方には朗報だと思います。
メリット
日本で仕事が出来る
個人的には、日本で仕事を継続出来るのが一番のメリットかなと思います。留学自体は大変貴重な経験なのですが、キャリアを中断してしまうことになるのが今までのデメリットでした。海外であれば、大学院進学のために仕事を辞めるのはありふれた光景ですので理解もあるのですが、日本の職場だと難しいこともあるかもしれません。
また学生ビザでは限られた時間しか働くことは出来ないので、基本的にはほぼ無収入になってしまいます。
日本で働きながら大学院に通えるとなると経済的にも多少は余裕が出るのではないでしょうか。
特に医師であれば残業のない職場で週3-4日ほど勤務し、残りの時間を大学院での授業や研究に当てれば経済的にも時間的にもうまく両立させられると思います。
プログラム履修期間が長いことがメリットにも
Part-time MPHは履修期間が長く設定されているのもメリットだと考えます。1年のFull-timeプログラムでは毎日の講義数が多く、授業の内容をしっかりと追うだけで精一杯になってしまい、研究活動にさける時間が限られてしまいます。
その点、Part-timeであれば授業の数をコントロールしながら、並行して研究時間を確保することが可能になります。2-3年あれば、職場やフィールドでのデータを使い、ジョンズ・ホプキンスの教授陣にサポートをしてもらいながら論文を数本書くことも十分可能ではないでしょうか。
ホプキンスの学生であれば、教授陣たちも喜んで共同研究者になってくれますし、生物統計家やグラント申請の専門家などへのコンサルテーションも可能になります。
費用比較
税金・健康保険料など細々したものは省略した超簡易見積もりです。
(Full time)
生活費 $22,000($2000×11ヶ月)※単身者を想定
授業料 $69,720
(機会損失 1000万円)
合計 $91,000(約1000万円)
機会損失を含めると約2000万円となります。
(Part-time)
生活費 240万円×3年→720万円
授業料 $72,960 (3年分)
機会損失 0
合計:1520万円/3年→約500万円/年
仕事をしている状態での500万円/年(生活費込)程度の負担であれば現実的な投資と考えられる人も多いのではないでしょうか。
マイナーな科目も勉強できる
現在では多くの日本の大学でもMPHの課程を提供しているので、アメリカの大学院に通う必要性は昔に比べると下がってきているかもしれません。
特に疫学や臨床研究の分野ではプログラムも充実してきているという話も耳にします。
一方で私が専攻している社会行動科学や、医療政策・経済学、医療経営、マイノリティヘルスといった分野は日本で学べる環境が極めて限られていると思います。
こういった日本ではあまり発達していない分野について興味をもっている人にとってホプキンスを始めとする海外のMPHを検討する価値があるかもしれません。
デメリット
日本の奨学金の大半に応募出来ない
全額を自費で支払う予定の場合には、日本での収入源を維持出来るという点で、online/part-timeプログラムに優位性があると思います。
ただし給付型奨学金の利用を考える場合には注意が必要です。
日本の給付型奨学金の大半はOnlineプログラムに対する支援を行っていません。
ホプキンスはオンラインの学生も応募出来る奨学金をいくつか用意していますが、日本のような先進国出身の学生が獲得できる確率は決して高くないと思われます。
ご自身の資金計画に基づいてプログラムを選択することが大切だと思います。
忍耐力は必要
私自身はFull-timeの学生ですので、onlineの講義は受けていますがプログラム全体としての感想を語ることは出来ません。
他大学でonline MPHを取得されたブログをご覧になるのが良いかもしれません。
Onlineの授業に対する感想を述べると、授業を倍速で再生出来るため効率は非常に良いです。また、スクリプトが同時に見れる仕様のため聴き取れなかった単語もすぐに確認することができます。
一方で授業が双方向的になりにくく、ディスカッションなども掲示板への書き込みを通じて行われるスタイルが多いため、物足りなさを感じることがしばしばあります。
質問などに対するリアクションもタイムラグがあるため、私は少しストレスに感じてしまいます。
そして何より仕事をしながらモチベーションを保ち、スケジュール通りに学習を勧めるにはそれなりの忍耐力が必要になるでしょう。
コネクション作りという壁
対面であれば授業のクラス内はコネクション作りに有効な場所です。世界中から集ったクラスメートと仲良くなり、教授に顔と名前を覚えてもらうことはFull Timeであれば決して難しくありません。
また、学内の研究室で行われているResearch Projectに参加したい場合は、Onsiteで参加できることが前提となっているため、そういった意味でも機会は限られてしまうように思われます。
一方で国内外のフィールドに拠点を置いたままであってもOnline/Part-timeプログラムには参加出来るため、自分ですでに研究プロジェクトやフィールドを持っている人にとっては良い選択肢だと思います。
今の僕が思う理想カリキュラム
クラスメートの中にはOnline/Part-time プログラムに在籍してからFull timeに移行した学生がいます。
トータルの授業料自体は高くなってしまう可能性もあるのですが、仕事をしながらonlineの必修科目を修了し(もちろんお金も貯まる)、フィールドで100時間の実務経験と研究のためのデータ収集を終えてからボルチモアにあるキャンパスでのFulltimeに移行するというパターンです。ボルチモアに引っ越してからは、Onsiteでしか提供されない授業を受けながら教授と共同研究をすすめ、論文を書きまくるという戦略で、いわば両者の良いところを組み合わせた理想的な履修計画で、驚かされました。
アメリカで学生ビザを取得するためには最低12単位/termを履修する必要があるのですが、授業が12単位のみであれば研究のための時間を存分に取ることができます。もしくは国際機関など外部機関でのインターンシップなどを行う余裕も十分にあるでしょう。
もし自分が今からもう一度全額私費で留学をするのであれば、このような”ハイブリッド・プログラム”を選ぶと思います。
さいごに
今回の完全Online完結型のオプションが提供されたことによりホプキンスのMPHはより柔軟で個人のニーズにあわせた履修プランを組めるようになりました。
MPH取得には様々な方法がありますが、より多くの人が質の高い環境で学べるようになることは素晴らしいと思います。
現在様々な障壁で悩んでいらっしゃる方のお役に少しでも立てれば幸いです。
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