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服薬アドヒアランスを向上させよ

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<服薬アドヒアランスとは>

アドヒアランス(Adherence)は「順守」という意味の単語です。医師によって必要と判断された薬が処方されますが、それを定められた用法で内服する必要があります。用法を守り正しく服薬を継続することを服薬アドヒアランスというのです。
服薬の自己中断などは医療コストの上昇を招くとされており、日本でも毎年2800億円から5950億円程度の追加費用が生じていると推計されています。(1)

 

抗凝固の自己中断は脳梗塞に繋がりますし、結核やHIVでの不規則な服薬はウイルス変異を助長し命にかかわる状態となります。
基礎研究者が凄まじい努力で見出し、製薬会社が社運をかけて開発を進めるのがひとつの薬です。
臨床医の診断により患者さんのもとへ運ばれても、正しく服薬してもらえなければ全ての努力が水の泡となります。

<結核とDOTS>

“DOTSはDirect Observed Treatment, Short-courseの略で日本語では「直接監視下短期化学療法」と訳されています。結核は不治の病ではなく薬を飲み続けることによって完治するのですが服薬期間が長くなかなか成績が上がりませんでした。「DOTS戦略の父」と呼ばれるカレル・スティブロ博士が明示した、短期化学療法を導入して治療期間を短くしただけでは治療成績が向上できなかったのを、服薬を直接確認システムを導入することによって治癒率を上げることができるという事例から、1995年に「効果的な結核対策のための枠組み」として名づけられたのです。“
具体的な方法としては
①入院の上、対面で服薬を確認する方法。
②保健所、薬局、病院等に患者が出向いて服薬をする方法。
③医療スタッフが患者のもとに出向いて服薬を確認する方法。
などがあります。
しかし交通費などの費用も馬鹿になりませんし、服薬確認のために時間がかかり患者の負担が大きいことが問題となっていました。

 

<モバイルヘルスの活用へ>

このような状況を解決するためにSkypeなどのビデオ通話機能をしようしたVideo-DOTSがアメリカなどでは行われているようです。
実際には
副作用の確認
薬袋の確認
カメラの前で薬を飲む
次のビデオチャットをする時間を決める
という流れで行われるようです。(2)

 

通院やスタッフの訪問に必要な時間・費用が大幅に削減され、良好なアドヒアランスを示しており、途上国などでも応用されています。
一方で、対面でないため副作用の評価が行いにくいことや、医療スタッフとの関係性が構築しづらいといった問題点が指摘されています。(3,4)
個人的には、DOTSはビデオベースで行い、副作用などは定期的に外来でフォローするという方針で治療すれば問題ないかとも思うのですが。

 

いずれにせよ単純な発想ですが、「監視を行うことで治療からのドロップアウトを防ぐ」ということや「かならずしも対面の必要はないから簡単なテクノロジーに置き換えよう」というアイディアは素晴らしいと思い紹介させて頂きました。

 

<まとめ>

  • 服薬アドヒアランスの改善は医療の大きな問題
  • DOTSをSkypeでやっている国があるらしい
  • Video-DOTSは時間・費用などのコストを大幅に削減できる

<文献一覧>

1)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjphcs/38/8/38_522/_pdf

2)https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4558232/

3)https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/27598709/#

4)https://www.cdc.gov/tb/publications/pdf/TBeDOTToolkit.pdf


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