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社会のつながりを活用せよ!

Nudgeの事例紹介



<社会のつながりと行動>

人間の行動は社会のつながり:ソーシャルネットワークを通じて伝播することが知られています。例えば家族や友人が肥満だとその周囲の人も肥満になっていくいことや、禁煙に成功した人の家族や友人、同僚たちはタバコを吸わない傾向にあること等がこれまでの研究で示されてきました。もし健康行動がソーシャルネットワークを通じて拡散していくのなら、その特性を上手く活用できないか、と検証したのがこの記事で紹介する研究です。

<研究紹介>

この研究では水の浄化に塩素を使用するように広めるという介入と微量栄養素に対するマルチビタミン内服を普及させるという介入がホンジュラスで行われました。
対象となった村は3つのグループにわけられました。
①住民のうちランダムに選ばれた5%に介入
②ランダムに選ばれた5%の住民に紹介された友人に介入
③村で社会的なつながりの多い人上位5%に介入

 

②のグループは”Friendship Paradox(友人関係のパラドクス)”という社会学の概念に基づいて設定されています。
これは、一般的にある人の友人の友人の数の方が、ある人の友人の数よりも多くなる確立が高いという不思議な現象です。
詳細は前回のブログ記事にまとめていますので、そちらをご参照下さい。
塩素使用とマルチビタミンがどのくらい村の人々に普及したかが評価されています。具体的には、介入対象者には地域の商店でそれぞれの商品に交換可能なチケットが配布されました。それらが、周囲の人に配布され、その人がチケットを使うと、新たな配布用のチケットが支給されます。これらのチケットをトラッキングすることによりどのくらいの人が商品を手にしたかが徴されました。

 

マルチビタミンの普及に関しては、②(74.3%)→③(66.2%)→①(61.0)の順に高い割合でチケットを商品に換えて入手し、絶対数としても多くの人々に商品が行き渡りました。また、村全体の知識レベルが向上したことも確認されています。

 

一方で、塩素使用に関しては集団間で有意な差はみられませんでした。これは、塩素の使用がより複雑で既存の行動を変える必要があったためではないかと筆者らは考察しています。

 

この研究で特筆べき点は③のような介入は、人々の人間関係を調べ上げる必要があることから多くの時間・労力・費用が必要になります。それに比べると②の介入は比較的手間をかけることなく実務に応用可能です。

 

集団全体に介入することは現実の健康介入では様々な制約により難しいことも多いです。しかし、このように効率よくターゲットを絞り込む事によって、集団全体に知識や行動変容を起こすことが出来る可能性があるというのは、非常に画期的な発見だと思います。
どのような介入に有効なのか、どんな集団にも応用可能なのか、等については今後のさらなる研究が必要となりますが、これからも注目していきたい分野であることは間違いありません。



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